2018/04/12
家族の助け合い わずかな時間でも協力を
認知症がある方の介護では、ちょっとした行き違いで本人と介護者の関係がぎくしゃくしてしまうことがあります。そのような場合、一時的に誰かが代わりを務めてくれると、互いの機嫌を損ねることなく介護が続けられます。
認知症の80歳代女性のエピソードです。この女性は普段から義歯の具合が良くなく、ある日の夕食時、ほとんど食べられませんでした。その後いつものように娘が義歯を洗浄し、寝る準備をしている時に思わぬことが起こりました。「義歯の具合が悪く、食べられなかった」という事実が本人の記憶から抜け落ちてしまい、「娘が洗浄したことで義歯の具合が悪くなった」と言い出したのです。
そして、「入れ歯を磨いたから(義歯の具合が悪化した)」と何度も娘に言い続ける状況になってしまいました。このままでは母と娘の関係が悪くなってしまいかねません。そこで、就寝までの介助を孫が代わりに行うことにしました。その結果、翌朝にはいつもと変わらぬ母と娘の関係に戻っていました。
この家族のように、たとえわずかな時間でも家族で助け合うことで、上手に在宅介護を続けることができるのです。
(但馬長寿の郷 理学療法士)
(神戸新聞 平成30年3月24日版転載)